佐藤柔心斎

今から6年前、北京の八卦掌の先人達のお墓がある万安公墓に佐藤金兵衛翁の墓を建立するために北京に行った時、王府井(ワンフーチン)のお茶屋さんでこの茶器を見つけて、一目で気に入り、日本へ持って帰ってきました。

写真は、お茶を入れるときに、外にお茶がこぼれないようにする茶盤(ちゃばん)の上に、茶壷(ちゃふう:日本でいう急須)に茶海という茶壷からお茶を注いで、茶杯(日本でいう茶碗)に注ぎ分け入れるものと、お茶の香りをかぐ器である聞香杯(もんこうはい)を撮ったものです。香りの良い中国茶をいれるときには、始めに聞香杯に注ぎ、次に茶杯をかぶせるように置いて、ひっくり返し、聞香杯を持ち上げて、茶杯に移し、そして、聞香杯を鼻に近づけて香りを楽しみ、茶杯でゆっくりお茶を味わうのが通常の飲み方です。

李子鳴老師のお宅にお伺いした時には、必ずこのような茶道具を使って、奥さんがよく香りの良いお茶を入れてくれました。私は花茶(ジャスミン茶)が大好きです。なぜなら、このジャスミンの香りにはリラックス効果があるから。私は北京に行くと奥さんが作ってくれた暖かい点心に花茶をいれてもらえるのが至福のひとときでした。また、同じ花茶で、日本ではあまり飲みませんが、菊茶があります。菊の花にはあまり香りがありませんが、冬の北京では空気がとても乾燥するので、のどを潤し、目にも良いということで、よく菊茶を飲みます。菊の黄色い花が目にも鮮やかに美しく、苦味はあるけれども、おいしいお茶です。日本人には好き嫌いがあるかもしれません。

何年かぶりにこの茶器を取り出して、女性クラスの後にジャスミン茶をたててみました。茶海に注がれたお茶の香りが部屋全体に広がって、それだけでもリラックス状態。茶杯にたてた聞香杯(もんこうはい)をみんなでゆっくりぬくと、ちょうど一杯分が茶杯に注がれ、聞香杯を鼻に近づけて香りを楽しみ、封じ込められていたジャスミンの香りがぱっと広がったときは、本当に好い気持ちでした。それからゆっくりとお茶を味わう。ああ、ホッ、と一息!中国茶のこの小さな器にはゆとりと癒しの魔法があるのです。

全日本中国拳法連盟のブログより: